
起業を決断したMBA留学
目次
日本文化の神髄をちゃんと伝えるサービスを作りたい
ーー起業するにあたり、インバウンド・旅行という領域にしたのには何か理由があったんですか?
観光庁との仕事で、MICE(マイス)と呼ばれる、会議をどう誘致するか、これから観光の需要がどう増えるかという話に関わった時、観光ビジネスは伸びると思ったのが最初のきっかけでした。
さらに、IEでJAPAN TREK を企画した時、外国人が日本観光でできることを初めてきちんと調べたんですが、質の高い英語のサービスがほぼないことがわかりました。通り一遍の観光地に行くのではなく、もっと深くちゃんと日本文化の神髄を体験できるサービスを提供すれば受けそうだと思い、観光客が日本文化体験で何ができるかをだんだん絞っていった感じですね。
――Koi Travelのサービス内容について教えてください。
主に英米系の英語話者のハイエンドからアッパーミドル向けのツアーを企画しています。ツアーは2種類あって、1つは普通のウォーキングツアー。ガイドと表参道や代官山を歩いて、街と人を知ってもらうツアーです。このツアーの売上が一番大きく、頻繁に問い合わせもきます。もう1つは弊社独自の文化体験ツアーで、日本の伝統工芸の職人さんに会いに行くツアーです。一番人気があるのは日本刀の工房で、いかに鉄の塊から美しい日本刀を作るかという工程の一部を見せてもらうツアーです。他にも、益子焼や備前焼のツアーは人気があってよく売れていますし、京都の螺鈿職人のツアーも人気があります。
職人さんと話すことで、日本文化や日本人について知ってもらうことが狙いです。旅行していると海外に身を置いていても、実際に現地の人と話す機会って意外とないですよね。ガイドを雇えばその人を通じて日本人というものが透けて見えますが、職人さんの方が日本人らしさを自然に体現していると思うんです。日本の歴史、昔ながらの職人気質、なぜ日本人がマニアックなものを作るのか、職人さんと1時間話すだけでも体感できる、弊社のツアーのそういうところが受けてるいのかなと思います。
地方に人を連れて行きたい
――今後の目標について教えて下さい。
もっと地方に人を連れて行きたい、地方で特に若い女性の雇用創出に繋がることがしたいと思っています。弊社のガイドさん達は、子育てを機に退職した方とか、留学経験があって会社を早期退職した方とか、優秀な方が多く、そういうガイドさんだと、やっぱりお客さんの反応もいいんです。
きっと地方にもそういう方々がいるはずで、大学卒業後すぐで優秀なのに地元に雇用がないから意に沿わない仕事している人とか、希望の仕事がないから東京や都会に出てくる準備をしている人がいるんじゃないかと想像しているんです。そういう人たちに、ツアーガイドという仕事が、かっこいい仕事だよねって目指してもらえるような職種にできたらいいなという野望を持っています。
その壮大な野望の一歩として、地方に顧客のニーズにあったツアーを実際に作って運営するのを協力してくれる会社やガイドさんが見つかれば、或いは一緒に作っていけるといいなという夢があります。あと、弊社のプログラムの若い鎌倉彫職人さんがアート作品を作り始めているので、そういうものを海外に売りたいとも思っています。
MBA受験生へのメッセージ
留学前って費用対効果とか本当に意味があるかとか考えると思うんですが、日本の場合、年収を上げるだけならコンサルや投資銀行に転職する方が確実かもしれない。なぜわざわざキャリアを中断してMBA留学に行くのかと言うと、数字でははかれない面白みを得るためだと思うんです。
IEはいろいろな挑戦をする人が多いので、自分自身の価値観にも大きな影響を受けました。20代、30代のたった1年ですが、MBA留学は人生への影響が大きいので、自分の好奇心が刺激されるなら、それに従うといいと思います。特に私は子供を産んで、自分の人生を自分だけのものとして自由自在に振る舞える期間というのは、限られていると感じました。今、留学が可能な環境に身を置いているなら、是非チャレンジして、世界を広げて欲しいと思います。