Search:
IE Business School Japanese Alumni Chapter | 不安定な世界における女性と新しいリーダーシップ
23236
post-template-default,single,single-post,postid-23236,single-format-standard,edgt-core-1.2,ajax_fade,page_not_loaded,,hudson child-child-ver-1.0.1,hudson-ver-3.1, vertical_menu_with_scroll,smooth_scroll,side_menu_slide_from_right,blog_installed,wpb-js-composer js-comp-ver-6.0.5,vc_responsive

不安定な世界における女性と新しいリーダーシップ

Nov 19 2020

不安定な世界における女性と新しいリーダーシップ

今日の不安定な時代において、リーダーシップの重要性はますます高まっています。本稿では、「女性」をキーワードにして、リーダーシップについて考察したいと思います。

 

坂井 萌さん
Latest posts by 坂井 萌さん (see all)

     

    女性のリーダーが抱えるジレンマ

    リーダーシップで人々がまず頭に浮かべるのは、勇敢に人々を導く、例えば将軍のような人でしょう。強く、積極的、時に威圧感がある。これらのリーダーに見られがちな性質は、女性にはどう当てはまるでしょうか。米ラトガース大学のラドマン教授らの研究では、女性にとって一般的に好ましいとされる性質は、優しい、周囲への気遣い等であり、むしろ、立場が下の人たちが持っている性質に近いことが明らかにされています(1)

     

    当然、文化や個人による差はあるでしょうが、リーダーシップと女性に求められる性質にギャップがあることは、ある程度納得できます。個人的にも、職場でチームを統率する場合、男性と同じ態度で部下に接したとしても、「怖い」「中身は男性」と言われることはありましたし、そこには悪気はないにせよ、強いリーダーを歓迎するニュアンスはありませんでした。逆に、あまりに周囲に気遣うようであれば、リーダーシップが弱いともみなされ、女性が上に行く際に特有のジレンマが存在するのが事実でしょう。

     

     

    新しいリーダーシップ

    ただし、昨今、理想的なリーダーシップ像自体が変わってきています。ハーバード・ビジネススクールのリンダ・ヒル教授は、イノベーションを生むにはこれまでのトップダウンで指揮命令するリーダーシップでは限界があり、背後から羊飼いのように指揮し、多様なチームの力を最大化させることが必要、と述べています(2)

     

    私は現在、人事・組織改革に取り組む企業のコンサルティングをしていますが、多くの企業が、これまでとは違う新しいリーダー像を求めています。特に、変革を生み出すべく、独断的でない、ピープル・マネジメントに長けたリーダーに注目が集まっていると感じます。決まったゴールをトップダウンで押し付けるだけではイノベーションは生まれず、チーム構成員をよく理解し、その内面に働きかける必要が高まっています。結果的に、新しいリーダーシップはこれまで女性が期待されてきた性質に近く、女性もありのままにリーダーになれる、という主張がよく見かけられるようになりました。

     

     

    パンデミック下の共感型リーダーシップ

    最後に、個人的に上記の主張を実感した出来事を紹介したいと思います。

     

    日本では新型コロナウイルスの感染が2月下旬から拡大し、私の所属する会社においても、早々に全面的に自宅で仕事をすることになりました。当社において、それまでもリモートワークは日常的でしたが、これだけ毎日、ほぼ全員が自宅で作業するのは初めてのことです。私の場合苦しかったのは、休校になってどこにも行き場のない子どもが家にいたことです。当時、夫は海外におりとても帰国できそうにない状態で、感染リスクを恐れて高齢の親や近所の友人に会うことも避け、一人で格闘している状態でした。

     

    そんな先行きの見えない状況で励まされたのは、会社トップからのメッセージです。グローバル本社やリージョン、日本の3社のトップから、「従業員とその家族の健康が第一である」と繰り返し発せられ、会社方針や勤務方法の周知が頻回に、細やかに伝えられました。偶然にも3人のトップは当時、いずれも女性でした。ある人は、「困ったらいつでも連絡して」と毎回のメールに携帯番号を添えてくれ、ある人は、子ども達の休校や在宅勤務で困っている様子などを写真付きでありのままに教えてくれました。

     

    その姿は、「絶対にこのゴールを死守せよ」という指揮官というより、大切な価値観を示しながら、チーム員それぞれの状況に共感してくれるものでした。もちろん、男性でもそのような行動を示してくれる人はいるでしょう。ただ、女性のCEO達がとったこれらの行動はとても自然で、寄り添ってくれる温かさを感じました。これが新しいリーダーシップなのかもしれないと、とても刺激を受けた印象的な出来事でした。

     

    パンデミック下では、政治の世界でも女性トップの活躍に注目が集まりましたが、共通する部分があると思います。今求められているリーダーシップの要素として、以下の3点が導けるのではないでしょうか。

     

    • オープンでフラットな対話を促す
    • 弱みも含めて自己開示する
    • ゴールの達成だけではなく、価値観にフォーカスする

     

    恐らく、パンデミックに伴う異常な状態はまだまだ続くでしょう。そのような中、女性に親和的とも言えるこれらの要素は、人々を動機づけ、動かすヒントになると思います。今後のリーダーシップ像は自分が作っていく、そんな気概で、新しいタイプのリーダーが多く生まれることを願っています。

     

    (1) Laurie A. Rudman, Moss-Racusin, Phelan and Nauts, “Status incongruity and backlash effects: Defending the gender hierarchy motivates prejudice against female leaders”, Journal of Experimental Social Psychology, Vol.48, No.1, January 2012, pp.165-179.

    (2) Linda A. Hill, “Collective Genius: The Art and Practice of Leading Innovation”, Harvard Business School Press, June 2014.

     

     

     
    Share Post